myPrestoに収録されているほぼ全てのツールは、論文ないし実験を伴う実証等を経ています。しかしながら、開発初期(2001年~)以降の計算化学の進展・計算環境の変化に全ツールを対応させてきた訳では無く、現時点ではもはや推奨されない・使用する際に注意を要するツールも含まれています。
myPrestoツール群の主な機能について、必要性・精度・保守・使い易さなどの指標を以下に記載しました。
記載した指標は感覚的なもので、
★ | 注意が必要(一定の経験・知識があれば使用可能) |
★★ | 問題無し(一部機能に制限有り) |
★★★ | 推奨 |
となっています。
目次
このエンジンは、AMBERなどの古典力場を用いた生体高分子・有機化合物向けの分子動力学シミュレーションソフト(CPU版)です。通常のNVE / NVT / NPT のカノニカル分子動力学に加え、マルチカノニカル分子動力学が利用できます。球・周期境界(直方体・斜方セル)に対応しています。
必要性 | ★★★ | MDシミュレーション以外に、低分子の立体構造の準備等に使用。 |
精度 | ★★ | AMBER力場:param96, param99 (C99), C99-Fuji, C99-SB, C99-SB-ILDN, C99-SB-DISP。その他、CHARMM力場、OPLS力場にも対応。 |
保守管理 | ★★★ | |
速度 | 単一コア版・MPI版があり、使用する計算機を選ばないが、一般に遅い。 | |
使い易さ | ★★★ |
マニュアル
チュートリアル
内部仕様書1,内部仕様書2,内部仕様書3
非エバルト法(Zero-Multipole summation法)を用いた静電相互作用計算による分子動力学 (MD)計算を、GPUを用いて高速に実行します。MPIによって複数のGPUによる並列化計算が容易であり、100万原子系など大きな系に適します。但し、扱える系は直方体セル、NVTアンサンブルのみです。空間分割法を用いるため、一定サイズ以下(セルの1辺が、ZM法の相互作用カットオフ長の4倍以下、2万原子程度以下)の系には使えません。
必要性 | ★★ | MDシミュレーションのみ(適用される系に制限有り)。 |
精度 | ★★ | AMBER力場:param96, param99 (C99), C99-Fuji, C99-SB, C99-SB-ILDN, C99-SB-DISP。 |
保守管理 | ★★ | CUDA / GPUのバージョンにより動作しない場合有り。 |
計算速度 | 100万原子系では高速。 | |
使い易さ | ★★ | GPU(CUDA)環境に依存。 |
低分子化合物の分子構造に対して、簡易な3D構造の生成、確からしい位置への水素原子付加、Gasteiger電荷・MOPAC AM1BCC電荷などの付与、各種ファイル書式変換を行います。
対応書式 | PDB、SD (MOL)、Sybyl mol2、PDBx/mmCIF、SMILES。 | |
イオン形 | 非解離・水中での解離・金属配位する解離形、水素原子の付加・除去。 | |
電荷計算 | Gasteiger電荷、MOPAC AM1 BCC電荷。 | |
構造生成 | 簡易な立体座標生成およびMOPAC AM1/PM3(量子化学計算)での立体構造の最適化。 | |
取り扱い元素 | H, C, N, O, P, S, F, Cl, Br, I。 | |
必要性 | ★★★ | 低分子化合物を取り扱う際に使用。 |
精度 | ★★ | イオン形は、標準的な非解離形および解離形(各官能基がpH7.0での解離形、pKaは未考慮)。立体構造の生成は、プログラム内部に持つ各元素の標準的な構造パラメータ(GAFF最新版ではない)を適用。オプションで”-mop AM1”を設定するとMOPAC AM1での量子化学計算を使用した構造最適化を行う。この場合、構造は正確ではあるが速度は非常に遅く、初期構造によっては分子内化学反応により別分子種になる場合もある。また、ホウ素やケイ素など扱えない場合がある。 |
使い易さ | ★★★ | |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 5秒未満~30分(分子量1500Da程度の量子化学計算)。 |
myPrestoの各ツールで利用する生体高分子の分子トポロジーを構築します。PDBx/mmCIFフォーマットによる原子座標の入出力も可能であり、水・イオン・リガンド分子のトポロジーの取り扱いも簡略化しました。
必要性 | ★★★ | 分子シミュレーション(MDシミュレーション:cosgene, psygene, psygene-G, omegagene, ドッキングソフト:sievgene)で蛋白質、核酸を含む計算で必須。 蛋白質、核酸、低分子、水、金属イオン、NaClなどの塩を含む、孤立系(球状)・周期系(直方体セルなど)の系全体のトポロジーファイル生成に必要。 |
精度 | ★★ | AMBER力場:ff99, ff99-Fuji, ff99-SB, ff99-SB-ILDN, ff99-SB-DISP 核酸力場:ff99, ff99bsc0, OL3, YIL, ROC, Shaw 膜分子力場: lipid14 N末端、C末端のメチル化・アセチル化などでのCAP処理も同時に実行。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、PDBまたはPDBx(mmCIF)形式の分子構造ファイル。 出力は、対応するmyPrseto形式のトポロジーファイル。 |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 1~2秒程度。 |
myPrestoの各ツールで利用する低分子化合物の分子トポロジーを構築します。系が低分子化合物を含む場合、特にcosgene/psygene-G/omegageneでMDシミュレーションを行う場合には必須となります。このプログラムは、1分子(化学結合で連結された分子の集団)のみ対象とする為、2分子以上を含む複合体の場合、分割して処理する必要があります。
必要性 | ★★★ | 化合物分子を含む殆ど全ての計算で必須。 MDシミュレーションを行う系が低分子化合物を含む場合、各低分子化合物に対してtplgeneLを適用し、tplgeneLが生成した座標ファイルとトポロジーファイルを組み込む。 |
精度 | ★★★ | 力場はGeneral AMBER Force Field (GAFF)。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、myPrseto形式またはSybl mol2形式の分子構造ファイル。 出力は、対応するmyPrseto形式のトポロジーファイルおよびPDB形式の座標ファイル。 |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 1~2秒程度。 |
膜貫通タンパク質・脂質二重膜・水・イオンを含む系の座標を作成するためのツールプログラムです。現在は、適用範囲が狭く、ユーザー指定項目が多いため、利用は推奨しません。現在、一般的な蛋白質を埋め込めるツールを開発中(未公開、要相談)。
必要性 | ★★ | 膜系の初期構造生成で使用。 |
精度 | ★ | Type AのG-protein coupled receptorのみが対象。事前に膜系を組んだアドレナリン受容体構造に対して、入力蛋白質をアラインメントすることで膜の中に埋め込む。系の大きさと塩濃度はユーザーが指定する。膜系の初期構造作成は、何が正しいのか正解がない為、精度は不明。 |
使い易さ | ★ | 入力パラメータが非常に多い。 |
保守管理 | ★ | 新規ツールの開発に移行しており、保守していない。 |
計算速度 | 3~10分程度。 |
Filling potential法は、2つの分子の複合体(蛋白質―薬物複合体など)において、片方の分子に反発ホテンシャルと求心ホテンシャルを与えたUmbrella Potentialを使ったMD計算を多数実行することで、複合体から解離した構造を生成します(現在、aMDまたはmeta dynamicsと呼ばれるもの)。使用したUmbrella Potentialの影響を考慮して、座標トラシェクトリ群の多重ヒストグラム解析(WHAM)を行うことによって、リガンド分子の解離経路に沿った自由エネルギー面を計算します。
必要性 | ★ | より使い易く正確なSRPG法で解離経路に沿った自由エネルギー面を計算する場合、解離経路の作成法の1つとして利用できる場合がある。 |
精度 | ★ | 本来精度は高いが、操作に慎重を要する。 |
使い易さ | ★ | パラメータの設定が難しく、試行錯誤を要する。 |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | 系に強く依存する。1~10nsのMDシミュレーションを100-200回繰り返す程度であるが、CPU版のcosgeneをMDシミュレーションに使う必要がある為、MDシミュレーション自体が遅い。 |
sievgeneDIAVは、受容体―リガンド複合体のMDシミュレーション計算の構造トラジェクトリーファイルを使用して、受容体とリガンドとの結合自由エネルギーの値を近似的に求めます。これは、受容体―リガンド間の相互作用の平均値と分散を用いて結合エネルギーを推測する方法で、本来の分子シミュレーションによる自由エネルギー計算とは異なり、結合エネルギーの概算値を知るための雑な近似です。
必要性 | ★ | 構造トラジェクトリーファイルの解析ツールの1つ。結果を他のツールで参照することはない。 |
精度 | ★★ | 粗い近似であるが、通常の受容体―低分子リガンドの場合、複合体構造が正しいならば誤差は1.5 kcal/mol程度。 |
使い易さ | ★★★ | 1 ns程度の短い受容体―リガンドのMDトラジェクトリーがあれば動作(逆に長時間MDでれば正確な値が得られる訳ではない)。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 5~10分程度。 |
低分子のコンフォーマを生成するツールです。回転可能な1重結合であって環に含まれない直鎖結合の回転によって、配座を生成します。同時に、分子を構成する各原子について化学的に等価な原子(対称の位置にある原子)のチェックを行うなど、RESP電荷計算に必要な情報も提供します。
必要性 | ★★★ | RESP電荷計算、分子の初期構造の生成、安定配座の探索などに利用。 |
精度 | ★ | 環の配座生成は出来ない。GAFFを内蔵していない為、配座生成後にtplgeneL→cosgeneの利用によるエネルギー最小化計算によって正確な原子座標を得る。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、Sybl mol2形式の分子構造ファイル。 出力は、対応するPDB形式の座標ファイルおよびRESP電荷計算用ファイル群(resp.in, qin, zmat.dat)。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 5~10分程度。 |
低分子における環状部分について、コンフォーマ構造を発生します。Confgeneと異なり、光学異性体の発生および環配座の生成のみを行います。
必要性 | ★★ | 化合物データベース作成時に光学異性体の発生に利用。 |
精度 | ★ | 直鎖の配座生成は出来ない。GAFFを内蔵していない為、配座生成後にconfgene→tplgeneL→cosgeneの利用によって直鎖の配座生成およびエネルギー最小化計算を行い、正確な原子座標を得る。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、Sybl mol2形式の分子構造ファイル。 出力は、対応するmol2・MDL・PDB形式の座標ファイル。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 5~10分程度。 |
低分子化合物の2次元電子カタログ(2D SDFファイル)から3次元分子構造の3D mol2ファイルからなる化合物データベースを構築するツールです。
必要性 | ★ | 多数の低分子化合物の2D-SDFなどを持っている場合に利用。市販化合物(数百万種類)については、既に3D mol2ファイルを作成済のものを毎年配給している。 |
精度 | ★★ | 光学異性体は、2D-SDFにキラリティが記入されていれば指定のキラリティを発生、若しくはありうる異性体を全て発生。力場はGAFF、原子電荷はMOPAC AM1-BCC電荷、イオン形はpH7の水中での解離形。金属錯体は金属、塩はSDFファイルで記載された分子量最大の分子を計算。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 500万化合物あたり3週間/100CPU並列程度。対象化合物の分子量は~2000Da程度。 |
世界中で市販されている低分子化合物(3次元分子構造、原子電荷および推算による分子の物性値)のオープンなデータベースです。主にナミキ商事、キシダ化学の販売可能な物質のカタログから構築しており、毎年、品目名は更新しています。またKEGG MEDICUSに集められた医薬品、PDB ligandについても同様の情報を含んでいます。
必要性 | ★★ | 薬物スクリーニング計算を行う対象であり、試薬を購入する場合にも利用。 |
精度 | ★★★ | 実際に合成され、構造が確認された物質であり、直ちに購入できる(在庫がある)ものが中心。 |
使い易さ | ★★★ | 溶解度の物性推算値が記載され、実験の容易さを考慮。 使用感はGUIに依存する。 |
保守管理 | ★★★ | 随時更新 |
フレキシブル・ドッキングの手法により、化合物を生体高分子へドッキングする(受容体―リガンド複合体候補構造)プログラムです。
必要性 | ★★★ | 受容体―リガンド複合体候補構造作成、ドッキングスコアを得る為に利用。 |
精度 | ★★ | 予測した複合体の構造のうち20%程度が正解となる(化合物の原子座標の予測誤差RMSD < 2Åを正解とする)。候補構造100個の中に、正しい構造が含まれる確率は約90%であり、確からしい構造の選択にはユーザーの観察を要する。結合エネルギーの平均誤差は約2.5 kcal/mol。 |
使い易さ | ★★★ | |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 1化合物当たり2秒~3分程度。対象化合物の分子量は150Da~400 Da程度。 |
sievgene_Mは、sievgeneのOpenMPによる並列処理版です。機能・精度は同等。sievgene_Mは、Intel社のメニーコアCPU(Xeon Phi)でも実行可能です。Intel Xeon Phiは50個以上のコアを搭載したコプロセッサです。
NMRによる蛋白質―化合物相互作用のシグナル情報を取り込んだフレキシブル・ドッキングの手法であり、化合物を生体高分子へドッキングさせるプログラムです。STDを改良したDIRECTION法による溶液NMRシグナルの取り込みにより、複合体予測精度は、約2倍に向上しています。
必要性 | ★ | 結合活性がマイクロM程度の化合物であり、STD-DIRECTIONの計測ができ、受容体の立体構造が明らかである場合、受容体―リガンド分子複合体をモデリングするのに利用可能。 |
精度 | ★★ | 既知の蛋白質―化合物複合体の再ドッキングによる予測では、正解構造はsievgeneの2倍程度に増加。構造未知の場合は、半数程度の場合で正解が得られると思われる。 |
使い易さ | ★★ | sievgeneでのドッキング計算と同程度。 |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 1化合物当たり1分~5分程度。対象化合物の分子量は150Da~400 Da程度。 |
標的蛋白質と既知活性化合物の複合体立体構造が入手可能な場合、既知活性化合物のドッキングポーズに対して入力分子の分子構造を重ね合わせるフレキシブル・ドッキングの手法です。このツールは、化合物を生体高分子へドッキングさせる場合、若しくはスクリーニングする場合に利用します。ユーザーが与えた薬物ドッキングポーズに対して、テスト化合物の分子体積の重ね合わせをドッキング計算と同時に行うことで、ユーザーのイメージした分子に近い化合物を選択できます。
必要性 | ★ | 標的蛋白質と既知活性化合物の複合体立体構造が入手可能な場合。 |
精度 | ★★ | 既知の蛋白質―化合物複合体の再ドッキングによる予測では、正解構造はsievgeneの結果より一般的に増加するが、効果のない場合もある。 |
使い易さ | ★★ | sievgeneでのドッキング計算と同程度。 |
保守管理 | ★★★ | |
計算速度 | 1化合物当たり1分~5分程度。 |
標的蛋白質とのドッキング計算によって低分子化合物のドッキングポーズを多数提示できる場合、既知複合体でのリガンドと体積の重なりが最も大きくなるようなポーズを選択します。体積は、各原子の電荷の大きさ、原子半径の違いを考慮したものです。
必要性 | ★ | 標的蛋白質と既知活性化合物の複合体立体構造が入手可能な場合。 |
精度 | ★★ | 正答率は参照される既知複合体でのリガンド分子に強く影響される。ドッキングソフトウェアが入力分子に対して100ポーズを出力している場合、50%程度の確率で正しい構造(ポーズ)を選択可能で、スコアトップ構造の正答率は約20%を上回る。参照できる既知構造が2つ以上あれば、正答率は70%程度まで高まり得る。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、入力分子・既知リガンド分子共に(原子電荷割り当て済み)Sybl mol2形式ファイル。 |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | 1分子当たり1秒程度。 |
MTS法、machine-learning MTS (MSM-MTS) 法、direct score modification MTS (DSM-MTS)法の3つの手法が利用できます。受容体に対するactive compoundsが既知の場合、 machine-learning MTSが最もヒット率が高い方法です。標的蛋白質構造(PDB形式)、結合ポケットの指示ファイル、入力分子(mol2ファイル形式)があれば利用できます。
必要性 | ★★ | Structure-based drug screeningをしたい場合。 |
精度 | ★★ | ヒット率は3~5%程度(スクリーニング結果の上位1%の化合物を採択時、活性が<1μM)。 |
使い易さ | ★★★ | 通常のドッキングスクリーニングと同様。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 200万化合物あたり10時間/50 CPU並列程度。対象化合物の分子量は150Da~400Da程度。 |
Ligand-based drug screening法として、オリジナルのdocking score index (DSI)法と、 machine-learning DSI (ML-DSI) 法が利用できます。受容体に対するactive compoundsが複数既知の場合には、 machine-learning DSI が高いヒット率を示します。標的蛋白質に対する低分子活性化合物が5~10個程度以上あれば利用可能です。標的蛋白質構造ファイル(PDB形式)、結合ポケットの指示ファイルは必要ありません。
必要性 | ★★ | Ligand-based drug screeningをしたい場合。 |
精度 | ★★ | ヒット率は既知化合物に強く影響され、適切な分子が準備されれば10~50%程度(スクリーニング結果の上位1%の化合物を採択時、活性が<1μM)。 |
使い易さ | ★★★ | 通常のドッキングスクリーニングと同様。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 200万化合物あたり10時間/50 CPU並列程度。対象化合物の分子量は150Da~400Da程度。 |
多数タンパク質に対する多数低分子化合物のsievgeneによる総当たりのドッキングスコアを提供します。ここでは、ポケット構造の多様性に富むとされる182種類の蛋白質と、薬物スクリーニングに用いるLigandBoxより抜き出した市販化合物200万種類(150Da < 分子量 < 350Da、ヘテロ原子の量が全重原子の15%以上を含む分子、化学反応性や変異原性が見込まれる分子構造を除外)を用いています。このデータベースがselectMTSおよびselectDSIに使われます。このデータベースの入手先情報は、screening_packマニュアルに記載されています。
必要性 | ★★ | 薬物スクリーニングにおいてMTS/DSIを利用したい場合。 |
精度 | ★★ | ヒット率は既知化合物に強く影響され、適切な分子が準備されれば10~50%程度(スクリーニング結果の上位1%の化合物を採択時、活性が<1μM)。 |
使い易さ | 数値データのみで、実行可能なソフトウェアを含まない。 | |
保守管理 | ★★ | 化合物データベースLigandBoxの更新に合わせて更新。 |
計算速度 | 200万化合物当たり10時間/50 CPU並列程度。対象化合物の分子量は150Da ~ 350 Da程度。分子中のヘテロ原子数が重原子数15%以上のもの。 |
MVO_scoreeningは、MVO(Maximum volume overlap)法を使って、クエリー分子と重なりが大きい分子を探索するプログラムです。分子の簡単な配座生成と、分子に含まれる原子のvan der Waals半径と電荷を考慮した重ね合わせを、エネルギー最小化計算と同時に行います。
必要性 | ★★ | Ligand-based drug screeningの場合。 |
精度 | 分子の重ね合わせによる「重複度」「類似度」は一般的な定義がないため、「精度」の基準はない。重ね合わせでは、分子全体の重ね合わせと、分子の部分構造の重ね合わせがあり、プログラムでは3種類の値を評価。 | |
使い易さ | ★★ | 入力は、Sybl mol2形式の分子構造ファイル。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 低分子の場合、1対(2分子)の重ね合わせは1~10秒程度。 |
化合物の部分構造探索、分子のグラフ同形を計算するプログラムです。分子を化学結合でつながったグラフとみなし、原子タイプも認識したグラフ同形を判別します。
必要性 | ★★ | |
精度 | ★★ | ligand-based drug screeningにも使えるが、あくまで分子構造の判別。 |
使い易さ | ★ | 入力は、Sybl mol2形式の分子構造ファイル。部分構造探索時は、適切なGUIがないと不便。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 低分子の場合、1対(2分子)の比較で1秒以下。 |
分子を化学結合でつながったグラフとみなし、この隣接行列の対角項に原子の物性値を代入した行列の、不変量である行列固有値を、分子記述子とする類似化合物探索法です。低分子リガンドの大まかな分子構造の類似性を解析します。比較的高速でランダムライブラリーの作成などで利用します。
必要性 | ★ | |
精度 | ★ | 分子構造の重ね合わせのような直感的な結果は得られない為、物性や活性の類似性を期待した計算には用いない。 |
使い易さ | ★★★ | 入力は、Sybl mol2形式の分子構造ファイル。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 1分子0.1秒程度。 |
分子の部分構造に基づく分子記述子とGBSA法での溶媒和自由エネルギー推算値に基づいて低分子化合物の溶解度(水溶解度:LogSaq)を推定し、アグリゲーションする確率も予測します。
必要性 | ★★★ | 多くのバイオ実験では試薬を水に溶かす必要がある。一般のスクリーニングでは100μM程度まで溶かす場合が多く、LogS > -5 程度の溶けやすさが望ましい。溶けにくい物質は、バイオ実験で非特異的相互作用を示す場合が多い。 |
精度 | ★★ | LogSの誤差は1程度(Sは単位がmol/Lであり、誤差1は溶解度で10倍の誤差)。溶解度は、固体での塩の種類、溶媒のpHなどに大きく依存するが、ここでは、十分なデータがない事からそれらを無視している。その為、物質と条件次第で誤差は拡大し得る。 |
使い易さ | ★★★ | |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | 配座発生・GBSA計算を行わない簡易な計算では、1分子1秒程度、GBSAを行い、配座発生を伴う場合は、1分子1~10分程度。 |
ユーザーの与えた母核構造に対して、医薬品らしい雰囲気を残しながら母核の修正・側鎖部分の付加などを行い、仮想的な化合物構造を多数生成するプログラムです。
このプログラムは、母核を修飾するのに使う側鎖のデータベース(フラグメントDB)の構築、複数のフラグメントDBのマージと、ユーザーの分子を基にした類縁の化合物集団の生成の3つのツールからなります。ReCGenは京都コンステラ・テクノロジーズが著作権を有する化合物構造生成プログラムです。
必要性 | ★★ | 実際にシード化合物からの合成展開をしたい場合。 |
精度 | ★★ | 既存薬から母核と思われる構造を取り出し、生成される構造群に元の既存薬の分子構造が含まれるかをテストしたところ、多くの場合に元の分子が再現されている。ただし、標的への結合活性の評価は行われていないので、他の手法で別途活性・物性を確認する必要がある。 |
使い易さ | ★★ | サービス用サーバをGUI越しに利用できる。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 1分子に対しての仮想分子の生成は数分~30分。 |
与えられた化合物の合成容易性を、分子の複雑度、光学活性中心、対称性、部分構造の使用頻度から予測するプログラムです。部分構造の使用頻度:分子を部分構造に分解したときに、それらの部分構造が用意した化合物のデータベースに含まれる分子での出現頻度により、しばしば使われる構造を多く含む場合は合成容易と判断します。合成容易性は、0(簡単)~10(困難)の数字で表示されます。合成容易性は、人の感覚を表す値で、物理量ではありません。
必要性 | ★ | 既に市販されている化合物、天然物など新規合成を要しない場合は不要。 |
精度 | ★ | 既に合成された化合物データベースに多数含まれる部分構造から成る分子は合成容易とする為、ユーザーが用意するデータベースに依存する。myPrestoで標準的な市販化合物のデータベースを提供。 |
使い易さ | ★★★ | myPresto portalでは常時自動計算。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 予測は0.1秒程度。データベースを自作する場合は、データベースの再構築の計算が分子数に依存。 |
PDBが提供するPDBx/mmCIFフォーマットとPDBフォーマットの双方のデータの読み書きを行うライブラリです。ユーザーの作成したC言語、f77およびf90のプログラムとリンクさせ、それらから呼び出して使う事ができます。
精度 | ★★ |
保守管理 | ★ |
Pdbcheckでは、PDB形式の蛋白質のファイルを読み、原子の衝突や、亜鉛・マグネシウムイオンなど2価の金属イオンに配位するCYS残基の解離形への書き換え、近接するCYS残基の存在などを検査し、ユーザーの指定により書き換えを行います。
必要性 | ★★ | myPresto portalで蛋白質の構造ファイル読み込み時に必ず実行される。 |
精度 | ★★ | 荷電残基の異常pKaなどは考慮されない。 |
使い易さ | ★★★ | myPresto portalでは自動計算。 |
保守管理 | ★★ | PDBx/mmCIF形式や核酸での動作は未確認。 |
計算速度 | 1~10秒程度。 |
1つのファイルに、複数の分子のSDF/MOL形式、mol2形式、SMILES形式で記載されているような場合(化合物データベースで一般的)に、1ファイルに1分子が記載されるように、名前を付けて分割・出力します。コメントの位置を分子構造の前・後の入れ替えも可能。
必要性 | ★★ | 複数の低分子を扱う場合にしばしば利用。 |
精度 | ★★★ | |
使い易さ | ★★★ | myPresto portalでは自動計算。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 1~10秒程度。 |
系が複数分子から構成される場合、通常はtplgeneXで構成分子のトポロジーファイルをマージします。しかし、tplgeneXでうまく処理できない場合など、ユーザーが手作業で複数分子のトポロジーファイルをまとめたい場合に利用します。
必要性 | ★ | MD計算の準備で、手作業でファイルを修正したい場合。 |
精度 | ★★ | |
使い易さ | ★ | 出力されたマージされたトポロジーファイルの先頭に、各分子の数を書き込む必要がある。 |
保守管理 | ★★ | |
計算速度 | 1秒程度。 |
低分子の分子の構造をCUIで修正する為のツールです。低分子に対する原子の付加・削除、結合の次数の変更、分子フラグメントの付加などを行います。
必要性 | ★ | CUIでファイルを修正したい場合。 |
精度 | ★ | このツール自体には力場は入っていない為、Hgene→tplgeneL→cosgeneの利用による構造最適化が必要。 |
使い易さ | ★ | myPresto portalでは自動計算。 |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | 1秒程度。 |
蛋白質などの溶質分子に対して、溶媒水分子を付加するツールです。このツールは孤立系(球状)・周期系(直方体)に対応しています。一辺が約16Aの直方体に入った256水分子のMD計算済み座標値が既に用意されており、この直方体を系にかぶせて原子間距離がvan der Waals接触するもの、系の境界からはみ出すものを削ることで水分子を配置します。
必要性 | ★ | myPresto portalでは溶媒和指定時に実行される。 |
精度 | ★★ | 荷電残基の異常pKaなどは考慮されない。配置後エネルギーの最小化計算が必要。水分子は原子間の接触がわずかでもあれば削除されてしまう為、隙間を詰めて水分子を詰めることができず、系の大きさに対して水分子の充填率がやや低い。 |
使い易さ | ★★★ | myPresto portalでは自動計算。 |
保守管理 | ★★ | PDBx/mmCIF形式や核酸での動作は未確認。 |
計算速度 | 1秒程度。 |
溶媒水分子を付加された系に対して、ユーザーの指示する濃度で塩(Na+, Cl-)を配置します。このツールは孤立系(球状)・周期系(直方体)に対応しています(正確には水分子をNa+またはCl-で置換)。
必要性 | ★ | myPresto portalでは溶媒和指定時に実行される。 |
精度 | ★★ | 荷電残基の異常pKaなどは考慮されない。電場の計算は、古典的な距離依存型の誘電率で計算され、静電場のエネルギーに依存して確率的に水分子を塩に置換しており、ポアソン・ボルツマン方程式などを満たしていない。 |
使い易さ | ★★★ | myPresto portalでは自動計算。 |
保守管理 | ★★ | PDBx/mmCIF形式や核酸での動作は未確認。 |
計算速度 | 30~300秒程度。 |
MDシミュレーションの構造トラジェクトリーファイル中の分子構造をクラスタリング、または主成分分析・頻度の分析から自由エネルギー面を計算する為に利用します。
必要性 | ★ | MDシミュレーションの解析に利用。 |
精度 | ★★ | ロジックは正しい筈だが、機能が不十分。 |
使い易さ | ★ | 使いこなされていない。 |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | データ量に強く依存。 |
マルチカノニカルMDシミュレーションのエネルギートラジェクトリーファイルおよび構造トラジェクトリーファイルなどから、任意の温度のカノニカル分布を再現する様に重みづけを行うと共に構造を抽出します。
必要性 | ★★ | マルチカノニカルMD時には必須。 |
精度 | ★★ | ロジックは正しい筈だが、機能が不十分。 |
使い易さ | ★ | 使いこなされていない。 |
保守管理 | ★ | |
計算速度 | 10分程度。 |